煙管の語り場

此処をキャンプ地とする

ソウルシリーズ整理 無印DLC編

できるだけサクッと行きたいと思います。というのも、過去を追体験する形で明かされたことが、当時の情報量では実は多くない気がしているのです。

『2』『3』で判明したことによって話が補完されている部分もあるので、どこまでやるのか決めかねているというのが正直なところ。

まず当時の感慨として、主人公が意外と「アルトリウスに会える!」的なノリで直面してチェスターさんに弄られるとか、今でも割と珍しい描写だったことが印象に残ってます。割と本気で落ち込んでる無印主人公って純粋だなと思わせてくれるので好き。

元々、死にゆく騎士の願いを聞き届けて旅を始め、行方知れずの聖女や不死を救出し、火防女の魂奪い返して本人に返したり、美人の涙が最優先とでも言わんばかりに律儀なんですよね。そんな善人相手にお前なら行けるってやれるってみたいなノリが多い世界でも、しっかり力を貸してくれるゴーさん良い人過ぎて好きです。

自分語り終わり。本題に入りましょう。 

 

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DLCとは何だったのか

DLCでの主人公は巻き込まれただけの存在であり「深淵歩きアルトリウス」は志半ばで深淵に呑まれ、主人公が代打を務めるという歴史の裏側でした。どっかのデュライ白書みたいに、後世に残されない過去の闘いですね。

しかし、深淵を巡る激戦を乗り越え、過去への観光が終わってみると、割と疑問が残ったままでした。

「マヌスとは何者だったのか」

「そもそも深淵とは?」

これが頭からすっぽり抜けてしまうほど闘技場を楽しんでいた当時。

割と薄味のストーリーになっていたのは否定できませんが、語られてきた四騎士の行方が明確に描かれたものであると同時に、深淵の化け物を倒せるのは神や英雄ではなく人間であることが示された、これからの世界の根幹に関わってくる話でした。

そして何より注目したいのは、

人間性という人の闇そのものが牙を向けてきたこと。

同じ闇に位置する存在が、形を得て対峙してきた物語という点です。

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状況を整理してみよう

まず時代背景を整理すると、舞台は古い黄金の魔術の国ウーラシール。

宵闇曰くあれは何百年も前の話、つまり千年前のグウィンによる火継ぎで保たれていた時代でした。古い魔術の都ウーラシールは溢れ出した深淵により、街そのものを飲み込まれ、市民は人間性の暴走によって頭部が肥大化した怪物と化して、滅びゆく定めの地となっていました。そして深淵は主の存在によって広がり続けているという。

事の発端は闇の蛇つまり「闇撫でのカアス」が唆したらしいですが、実のところウーラシール人に関しては何がしたかったのかというのが曖昧でした。「深淵の主マヌス」という存在を蘇らせたかった? 掘り起こされた墓にいたマヌスが深淵の主に変貌したのか? 色んな受け取り方ができる表現で困りました。

そんな中、あの人が比較的丁寧に説明してくれていますので注目。

深淵など、まさにウーラシールの自業自得。

出っ歯の大蛇に謀られ、墓を掘り、古人の躯を辱めるなどまさに恥知らず、愚者ではないか

それに、所詮私たちには昔の話だ

素晴らしいチェスターさんマジェスティックな回答ありがとうございました。隠居の身と語る鷹の目ゴーさんにも話を窺いましょう。

友アルトリウスを蝕んだ深淵の闇は いまやこの国、ウーラシールを飲み込もうとしている

…おそらく、滅びは避けられまい。

だが、たとえ、闇の蛇に唆されたとして

彼らは自ら望み、あれを起こし、狂わせたのだ

被害者であるはずの彼らが元凶だと言わんばかりの口ぶりでしたね。 

 

墓の主は誰だったのか

マヌスの正体は誰だったのか色々語られてますが、墓の正体が諸悪の根源だと思っているので、そっちの正体について先に考えます。

ウーラシール地下牢の先、深淵の穴の奥底にそれは眠っていました。

マヌス戦後に見られる棺を見る限り、化け物ではなく人が納まっていたのは明白です。暴かれた墓は人間のものだったのか? 

古人の墓を掘り起こした事で深淵の主が生まれたらしい。

では、人であった頃のマヌス本人の棺ではないのか? 

自分も長年そう考えてきました。しかし、化け物となった条件として人間性の暴走」がありましたね。人が化け物となるというのも、後年の作品で明かされた部分でしたが、マヌスとウーラシール人だけでは人間性を「刺激させるもの」という決定的な要素が欠けていました。もし、マヌスが自力あるいは墓荒らしによって人間性を暴走させ、国を呑み込むほどの闇を抱えてる存在であったならば、カアスが唆す以前にウーラシール人も神様サイドもその存在を放っておくはずがありません。

仮にもし、ウーラシールの人であると明言されているマヌスが、本当に深淵をもたらせる「古い小人」であったのならば、ウーラシールは神々と共存するような古い黄金の魔術の国ではなく、とうの昔から闇に傾いた国であったはずです。宵闇曰くこの時代の魔術と比べると寛容でいい加減。そんな彼らだからこそ、恐ろしいものとされていた「闇」に興味を惹かれ、それが人の力だと語る蛇の誘惑に負けたのです。

そして今一度、彼の言葉を思い出してみましょう。チェスター曰く墓を掘り、古人の躯を辱めるなどまさに恥知らず。

ウーラシール人が墓を荒らして求めていたのは古人の躯。

つまり用があったのは

死体」でした。

「死者の活性(DS2)」

生命の抜け落ちた死骸に働きかけ
闇の炎で爆発させる闇術
生命を愚弄するこの術は闇術のなかでも
特に忌み嫌われる

「死者の活性(DS3) 」

ロンドール黒教会の冒涜的奇跡

死骸を祝福し、闇の爆弾と化す

亡者の国ロンドールでは、不死こそが人であり
死骸など、所詮相容れぬ生者たちのなれの果て
祝福を躊躇う必要がどこにあろうか?

 前回のおさらいとして、この世界では死ですら「はじまりの火」による差異でもたらされていました。そして人間から不死が現れるようになっていった。グウィンによる火継ぎで、火は存続している時代の中で墓があるということは、死者が現れていたわけです。ニト様の出番ですね。

死が人間に作用しているのであれば、生命は身体から抜け落ちてニト様の下に還っていく。墓を荒らすという行為の目的は何であれ、そこにあるのは死者の身体だと、彼らは承知の上で暴いたということとなります。

では、死体に残されるもので何があるか?

それは不死である皆さんも常に回収しているもの。

 

ソウルです。

 

強大なソウルを宿した古人の躯。ウーラシールはこれを利用しようとして、ナニカサレタ集団だったのです。

それが人が宿している人間性を刺激し、暴走させたものの正体でした。

そして、深淵に触れるだけで身体に異常をきたして襲ってくる化け物と化す。これに該当するだけの、強く純粋な闇のソウルに近い存在。つまり、一種の王のソウルそのものを宿した「最初の小人の墓」あるいはそれに近い「小人の王の墓」でした。

それを暴いたウーラシール人は求めた闇に狂い、魔術師マヌスは深淵の主へと変貌したわけです。ウーラシールが滅ぶのは置いといて、深淵が広がるのはマズい。そんな後手後手の状況で、アノール・ロンドはアルトリウスを送り出したわけでした。

黄金から闇への転落

ここでウーラシール人に焦点を絞ります。

マヌスって何がしたかったんだろうなーって考えるとドツボに嵌まって「そもそも悪いのはウーラシール人で、マヌス自身は特に悪いことはしていない」ってのに笑ってましたが実際、事故物件みたいな認識で正しかったのだと思います。

「王家の森庭」という名称から、元々グウィン王家の勢力にある国であったのでしょう。彼らは神々の庇護の下で暮らしている、光の魔術に秀でた人間たちであったのがウーラシール人でした。

「見えない武器」

亡国ウーラシールの古い魔術
右手武器を透明にする

単純な強化ではなく、使い手に依存する
ウーラシールの魔術は光を扱う術に長けており
この魔術もまたその一端である

「照らす光」

亡国ウーラシールの古い魔術
周囲を明るく照らす光を作る
光を生み出す単純な魔術であるが
それこそがウーラシールの神秘であり
ヴィンハイムではついに実現していない

「修復 (DS2)」

いつのものとも知れぬ古い魔術
装備している武器、防具を修理する
傷んだ武器、防具を光によって補修する
対象を過去の姿に戻しているのだとも言われるが
その原理はとうに失われており、
詳しいことは何もわかっていない

アノール・ロンドにある透明の見えない道の存在、神々が去って暗闇に包まれているはずの王都が光で照らされているのは、彼らの魔術によるものであると推測できます。※輪の都にハーフライト君が訪れたのも、おそらくあそこの光や時間の操作に一枚噛んでいる。

そんなウーラシールに闇の陰りがもたらされたわけですが、ここで考えるべきなのは、カアスがウーラシール人と接触し、何をさせたかったのかという点。

人間は闇のソウルを宿した小人の末裔であり、彼らが神々に反旗を翻すように仕向けるのがカアスの役割。来たるべき闇の時代、ひいては闇の王を見出すために行動を起こしていました。滅び去った小ロンドの深淵にて、四人の公王を倒した後に姿を見せたカアス。公王の位を授かって王のソウルを分け与えられた彼らに、闇の啓示を授けて勢力拡大してみたものの、力に溺れた公王に対する失望を口にしていました。

ウーラシール人に何を期待したのか。

闇に相応しい器を求めていたカアスが、わざわざグウィン勢力の下にあったウーラシール人に接触した。古い小人の墓を暴くと何が起きるのか予想出来ていたのでしょうか?結果的にウーラシールを闇へと誘ったことによって、隠居のゴーさんはともかく、四騎士の内の二人は王家に帰還せず事実上崩壊、残ったのは狼と僅かな形見、語るべきとされた深淵歩きの伝説でした。

ウーラシール人は人として闇に堕ち、自ら求めた強大な闇により破滅しましたが、神々の喉元に食らいついて傷跡を残したのは確かでした。

カアスの目的がそれだったのかは分かりませんが、闇の蛇が現れる場所にはいつも闇があり、その思惑に乗せられたウーラシール人によって、結果的には一定の成果を手にしていました。それが闇の魔術であり、後に継がれる闇術です。

「闇の玉」

ウーラシールの魔術師が狂気の内に見出した
深淵の魔術。巨大な闇の玉を放つ
通常のソウルの魔術とは異なり
闇の魔術は重く、物理的なダメージを伴う
人のソウルは、人間性としてより
実態に近づくのだろうか 

「闇の霧」

ウーラシールの魔術師が狂気の内に見出した
深淵の魔術。闇の霧を発生させる
人間性に近しいはずの闇の霧は
だが、人にとっては恐ろしい毒となる
多くの人が、よく人を蝕むがごとく

「黒炎」

ウーラシールに迷い込んだある呪術師が
深淵の闇に見出した呪術
手元に大きく黒い炎を発生させる

かつての魔術師による黄金都市は闇の都と化し、やがて全てを呑み込まれて滅びました。彼らは自ら望んで、狂気の研究を追い求めた。闇に全て呑み込まれ、その身が蝕まれる時まで。

 肥大した頭部曰く

深淵の主マヌスの闇に飲まれ、人間性を暴走させたウーラシール民の頭部

しかし、後の時代では闇の魔術の存在が確立され、多くの国に広まっていったとさ。めでたしめでたし。

「反動 (DS2)」

闇術師ギリアには、ただひとりとして弟子はおらず、
その業が伝えられた経緯も謎に包まれている
あるいは闇の術とは、どこか別のところから
生まれたものなのかもしれない

闇は意志をもって形作られる

古の強大なソウルが宿主に力を与える。 これは後の作品でのキーになりますね。加えて、マヌスが敗れた後に「闇の子」という欠片がばら撒かれるので、彼に宿ったのはまさに王のソウルそのものだったのでしょう。

さて、そんな王のソウルに近付いたマヌスが、何故時を越えて対象を引き寄せる力を得たのか? マヌスは時と光を操る黄金の国の魔術師。そして人間性を暴走させて、化け物へと成り果てたということでした。それだけでは強大な闇の力を振るうだけの四人の公王といった存在と大差ありません。あれだけの奇特な力をマヌスだけが有している理由、それを得たカギは人であった頃の縁の品である「割れたペンダント」と「宵闇の存在」でした。

「追う者たち」

深淵の主マヌスの魔術

人間性の闇に仮そめの意志を与え放つもの
与えられる意志は人への羨望、あるいは愛であり
その最期が小さな悲劇でしかありえないとしても
目標は執拗に追い続ける 

ウーラシールの宵闇や思い出の品に焦がれ、時代を越えてまで自身の下に手繰り寄せた特異な力。それは闇そのものが宿主の意志によって形作られ、それに応じた力と化すという人間性の可能性の一端でした。たとえ、それが愛であろうと、その純粋な想いは力をもたらしました。

その片割れ紐の蔓はウーラシールのものだろうか 

今人が知らず、抗えもせぬその力はとても強い郷愁、愛慕の類だ

人であるが故に何かを求めていた彼は手を伸ばした。それが人であった頃の名残であれ、あれだけの力を与えたのは、マヌス自身にある意志の力によるものでした。

強く、懐かしむ感情…
戻らない幸福と、その思い出の品…それを求める思い…
あれは、もしかしたら、深淵の化け物のものでしょうか…
あのような感情を抱くものを
化け物と呼んでいいのでしょうか…

※宵闇がこのように意思を読み取ったり深淵でマヌスに近付いても無事だった点、マヌスに強く求められていたのは「火防女」に近い存在だったからだと思われますが、これは後々やります。

 

それは侵してはならない領域

 

マヌスがアルトリウスを負かすことで、闇の本質的な力を神々に認知させることとなりました。本編自体は火継ぎという神話の物語でしたが、DLCにて不死が対峙したのは、同じ人の意志や欲、つまりは我々が抱えている人間性そのもの。

人の業が形を成し、牙を向けてくる。

そして後の時代、いつしか人は深淵と対峙する旅路を繰り返すことになるのでした。

ウーラシールは今、古い人の化け物が生んだ、深淵に飲まれようとしています

騎士アルトリウスが、これを留めに向かいましたが、英雄とて、所詮は闇を持たぬ身

いずれは深淵に飲まれ、闇に食われてしまうでしょう

…もう、深淵を留めることは、できないのかもしれません

深淵の正体は言及されませんでした。確かなのは、闇と深い関わりを持つ暗い空間であり、地下のその先の深い穴に広がる闇。何者も不可侵の闇は、主の存在により留まることなく広がっていく。

人間性の精が意志を持ち、死者の魂に近い亡霊が蠢いている世界を作り出すそこは、神にも及ばない世界の法則が築かれているのだろう、ということ。

闇を持たぬ存在が、そこにある闇に食われてしまう運命ならば、同じ力をもって制するしかない。未使用音声にあるようにアルトリウスは、借り物の力で誤魔化しただけの自分の無力さを理解していました。

Whatever thou art, stay away.

何者かは知らないが、離れてくれ

Soon, I will be consumed.

直に、私は飲み込まれてしまうだろう

Thou are strong, human

人間よ、君は強い

Surely thine kind are more than pure dark

人間なら、より純粋な闇に近いはずだ

I beg of thee, the spread of the abyss, must be stopped.

頼む、お願いだ。深淵の拡大は止めなければならないんだ

 

犬猫が友達だった彼は、人間とも対等な友となれたのかもしれない。

 

すべては闇から生まれたがゆえに、闇を恐れること。

闇を求める者も、いつしか闇に食われて身を滅ぼす。

この時から、警鐘は既に鳴らされていたのでした。